研究概要 |
B細胞上のCD40分子を介した刺激は、抗原受容体刺激により誘導される末梢B細胞の細胞死を阻害することが知られている。このことから、過剰なCD40刺激は末梢の自己反応性B細胞のクローン除去を阻害し、自己免疫疾患発症の原因となる可能性が考えられている。この可能性を証明するため、CD40のリガンド(CD40L)をB細胞上に過剰発現する遺伝子導入(TG)マウスを作成し、このマウスで自己免疫疾患が発症するかについて検討した。 生後1年のCD40L TGマウスでは、尿中タンパク量、血清中の抗DNA抗体量が、同週令のlittermateマウスと比較し有意に上昇していることが明らかとなった。また、CD40L TGマウスの腎臓の糸球体に、IgG,IgMや補体C3成分などからなる免疫複合体の沈着を認めた。これらのことから、CD40Lの過剰発現が腎炎をともなう全身性自己免疫疾患を引き起こすことが明らかとなった。この自己免疫疾患がどのような機序によって誘発されるかを明らかにするため、CD40L TGマウスと抗DNA抗体遺伝子TGマウスとを交配し、B細胞の大部分が自己反応性を持ちCD40Lを過剰発現するマウスを作成した。このマウスでは、骨髄中の自己反応性B細胞の除去は正常であったが、末梢での自己反応性B細胞の除去が阻害されていることが明らかとなった。また、この自己反応性B細胞の除去の阻害は未梢の移行期B細胞から成熟B細胞への分化過程で誘導されることが示唆された。以上から、過剰なCD40を介する刺激は、末梢での自己反応性B細胞のクローン除去を阻害する事によって自己トレランスを破綻させ、自己免疫疾患を発症させることが明らかとなった。ヒトのSLE患者では、B細胞でCD40Lが過剰発現されている例が報告されており、ヒトにおいても過剰なCD40を介する刺激が自己免疫病の病因となっていることが考えられる。
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