T細胞アナジーの維持にp38MAPキナーゼの活性化が重要であることを分子生物学的に証明するため、次の実験を試みた。 1)スーパー抗原Mls-1^aをin vivoに投与することによりCD4^+T細胞にアナジーを誘導し、アナジーT細胞をSB203580で前処置する又はしない場合で、TCR刺激後のMAPキナーゼ(ERK、p38)の活性化をin vitro kinase assay法を用いて解析した。 その結果、アナジーT細胞のTCR刺激後のp38の活性化はナイーブT細胞に比べて強く継続的に応答した。一方、TCR刺激後のERKの活性化は、アナジーT細胞では顕著に低下していたが、SB203580で前処置することによりその活性化が回復した。 2)レトロウィルスのシステムを用いてp38の上流分子であるMKK6 activeted form (MKK6(E))又はp38α wild type (wt)をナイーブT細胞に導入することにより増殖抑制が誘導されるかどうか、また、アナジーT細胞にp38α dominant nagative form (P38α (AGF))を導入することにより増殖の回復が誘導されるかどうかを解析した。 MKK6(E)、p38αwt又はp38α(AGF)をインサートとしたpMSCV-IThy1.1ベクターをpackaging cellsに導入し、packaging cellsから産生されるレトロウィルスをCFSEラベルしたナイーブT細胞及びアナジーT細胞に感染させ、Thy1.1が発現した細胞のTCR刺激後の分裂回数で増殖応答への効果を評価した。その結果、MKK6(E)を導入されたナイーブT細胞の増殖は部分的に抑制され、p38αwtを導入されたナイーブT細胞の増殖は比較的強く抑制された。一方、P38α(AGF)の導入されたアナジーT細胞の増殖は回復傾向にあることが確認できた。
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