腎尿細管機能障害作用をもつ毒性重金属であるカドミウムやシスプラチンは、ヒトの肝臓癌細胞由来のHep3B cellのin vitroでのエリスロポエチン産生を抑制する作用のあることを昨年度までの研究によって私は明らかにしてきた。そこで、今年度は、ラットを用いたin vivoの実験系においてこれらの重金属が腎臓のエリスロポエチン産生細胞に対してどのような作用を及ぼすかを検討した。ラットに対してカドミウムを8ヶ月皮下投与し(対照群には生理食塩水)、その上でラットを低気圧(0.65atm)に曝露して腎臓組織を採取し、H-E染色病理標本とエリスロポエチンcDNAのプローブを用いたin situ hybridizationを行った。その結果、エリスロポエチンmRNAは腎臓尿細管細胞に強く発現しており、カドミウム中毒ではそれらの細胞が特異的に障害されていることが判明した。シスプラチン投与によっても同様の結果が得られた。以上より、これらの金属は、腎臓でのエリスロポエチン産生細胞である尿細管細胞を直接障害することによって貧血を惹起することが示唆された。
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