研究概要 |
本研究は、精神作業が生体にあたえる負担度を従来の方法よりもより正確に測定・評価する方法を開発することを目的としている。そこで、近年測定評価が可能となり、本研究代表者が多くの分野で用いて、その有効性を確認している自律神経性の体循環調節機構および脳循環調節機構の各種評価パラメーターを、精神作業が生体にあたえる負担度の評価に応用し、従来方法より生体負担度をより正確に表しうることを実験的に検証しようとしている。そのため、平成12年度は安静座位状態および書き取り操作中に、中大脳動脈の血流速度を安定して測定できる様に装置の改良を行なった。ある程度の体動や姿勢の変化、日をあけての繰り返し測定等でもデータが影響されない様に、歯科用印象剤をもちいて被験者毎に側頭部の形をとり、ヘッドバンドと組み合わせ経頭蓋ドップラ血流計プローブを常時同じ角度で同じ部位に固定できるようにした。また、中大脳動脈最大血流速度の一心拍毎の平均値を、平均動脈血圧と心電図R-R間隔と共にリアルタイムで算出して表示し、データの安定性・妥当性を監視しながら記録できる様に測定装置とコンピュター解析装置を組み合わせた。この測定システム、解析方法の信頼性を検討するため、被験者10名から安静時の連続血圧、心電図、中大脳動脈血流速度を2週間空けて2回測定し、データの再現性をBland、Altman(Lancet 307-310,1986)の推奨する方法に従い確認した。得られたデータおよび周波数解析、伝達関数解析をおこなった値は、何れのパラメーターにおいても安定しており、特に脳血流自動調節能の評価指標である低周波数帯の動脈圧脳血流速度間のゲインは、1回目1.24±0.07、2回目1.25±0.07cm/sec/mmHg、測定誤差0.0023、測定誤差のSD0.080測定誤差の割合は0.2±1.8%と非常に高い再現性が確認できた。
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