研究概要 |
CYP2A6には酵素不活性となる遺伝子多型が複数種同定されており、これら多型保持者ではニコチンのコチニンへの代謝が阻害されている可能性がある。そこでCYP2A6遺伝子型判定方法を確立し、健常日本人894名の遺伝子型を調べた。その結果約96%は活性型である野生型(CYP2A6^*1)保持者であったが、他の殆どは両アレル欠失者でそれ以外の多型は一例も見つからなかった。また判定過程で4名に同一の1アミノ酸置換を伴う新規の遺伝子多型が同定された。そこでこの新規多型をCYP2A6^*6と定義し、その酵素学的特徴をリコンビナント蛋白を作成して検討した。 CYP2A6の特異的基質の一つであるクマリンに対する水酸化能はCYP2A6^*6はCYP2A6^*1の約10%程度に留まっており、またKm,Vmax値の算出結果から酵素の活性および基質特異性が著しく減弱している事がわかった。この原因を明らかにするため、まずヘム蛋白であるチトクロムP450のヘム含量をHPLCによって測定した。その結果CYP2A6^*6はCYP2A6^*1と同一の条件下で蛋白発現させたにもかかわらずヘム含量は約1/2しかなく、これがCYP2A6^*6酵素活性減弱の一因であると考えられた。しかしその低下レベルは酵素失活の原因全てを説明できる程度のものではなく、他にも影響因子があると思われた。そこで次にCO差スペクトラムを測定した。CYP2A6^*6においてヘムは正常状態の約半分量が保持されていたにも関わらず、活性型構造のP450が示す吸収ピークは全く認められなかった。よってこの多型では1アミノ酸置換によって活性発現に必須のフォームがとれなくなっていると考えられた。 以上の結果から遺伝子欠損型多型のみならずCYP2A6^*6保持者もニコチン代謝能は低下していると考えられ、今後は生体レベルでの代謝能の解析が必要である。
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