本年度は、まずアスベスト暴露により発症した悪性胸膜中皮腫患者より得られたパラフィン包埋組織およびアゾ染料曝露により発症した膀胱癌症例のパラフィン包埋組織をそれぞれの医療機関より得ることができた。さらに、それぞれの医療機関の主治医から病歴録等の医療情報の供覧許可を得、各患者の暴露歴を含む情報を収集することができた。 次にそれぞれの組織からDNAを抽出し、RCP(Polymerase Chain Reaction)法を用いてp53癌抑制遺伝子および用Ha-、Ki-ras癌遺伝子部位DNAを増幅した後、突然変異の有無をSSCP(Single Strand Comfornation Polymorphism)法および自動シークエンサーを用いて塩基配列を直接決定することにより遺伝子変異の検出を進めた。 悪性胸膜中皮腫症例の結果はp53、ras遺伝子ともほとんどが陰性所見であったが、唯一変異が認められたp53遺伝子変異症例はヘビースモカーであった。また、今までのp53遺伝子に変異が認められた悪性胸膜中皮腫症例の大半において、本症例を含み一般的にp53遺伝子多く認められる部位、パターン等異なっている可能性が示唆された。この知見は現在原著論文としてまとめ英文誌に投稿中である。一方、膀胱癌症例の方は現在解析を開始したところであり、来年度も解析を継続していく予定である。また、さらに来年度は新たにアスベスト関連腫瘍症例の更なる収集と他の種類の遺伝子解析を行っていく予定にしている。
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