研究概要 |
マルコフモデルとモンテカルロ・シミュレーションを用いた従来型の手法による評価を実施した。評価では、分析の立場として社会の立場を用い、対象者を40歳の一般的な地域住民として、スクリーニングを実施しない場合を基準に、生涯にわたり毎年、5年ごと、および1回のみ実施の3条件を用いた。その結果、スクリーニングを実施しない場合と比べ、その効果は0.07年(1回のみ実施)〜0.14年(毎年実施)の生存年延長であった。生活の質を調整した生存年(QALY)では、0.10年(1回のみ実施)〜0.19年(毎年実施)の延長であった。生涯の総費用は、スクリーニングの実施によって、13万円(1回のみ実施)〜63万円(毎年実施)増加した。費用・効果ともに年率5%で割引いた場合、生存年を1年延長するのに要する費用が、毎年、5年ごと、1回のみ実施で、それぞれ1,844万円、1,825万円、1,603万円であった。同様に、QALYを1年延長するのに要する費用は、それぞれ957万円、954万円、805万円であった。感度分析の結果、以上の結果は合併症の費用、合併症の発症率に比較的敏感であり、スクリーニングの費用、糖尿病の発症率、有病率、受動的発見による受療率には敏感ではなかった。以上の結果は、2型糖尿病スクリーニング実施に対して、中等度の根拠を示すと考えられる。ただし、結果の安定性については、設定条件についての追加研究による検討が必要と考えられる。
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