研究概要 |
目的:比較的規模の大きい市において、高齢者の自宅から通所介護・通所リハビリテーション(以下、通所介護)施設までの地理的距離とサービス利用との関連の有無を明らかにすることを目的とした。 方法:対象地域は東京都八王子市で、平成13年9月末日現在同市内の町丁数は205であった。八王子市とその周辺市に位置する通所介護施設に協力をお願いし、平成13年11月における八王子市内町丁別のサービス利用者数を調べた。また、八王子市役所に同年11月の八王子市全体の要介護度別通所介護利用者数、町丁別通所介護利用者数、町丁別要介護度別居宅介護サービス利用者数、市全体の要介護度別介護施設入所者数に関する情報提供をお願いした。上記のデータから各町ごとの要介護認定者の要介護度を調整した通所介護利用率(標準化利用比)を推計した。これは、八王子市における要介護認定を受けた第1号被保険者全体の通所介護利用を100とした場合の各町丁の利用状況を示す値である。また、各町丁の中心点から距離が短い順に5つの通所介護施設までの距離をArc View3.2及びNetwork Analystにより測定し、その平均値と標準化利用比との相関を調べた。なお、人口の少ない町丁については、隣接町丁と合わせて集計を行った。 結果:平成13年11月中に通所介護を利用した第1号被保険者は1,923人であった。168町丁について標準化利用比を求めることでき、その値が有意に低かった町丁数は5、有意に高かった町丁数は2であった。標準化利用比と施設までの距離の平均値との間には有意な正の相関が見られた(r=0.20)。 考察:本研究の結果からは、通所施設までの距離が遠くなると利用率が低下するという関連は認められなかった。今後は、観察期間を延ばし、より多くのデータを得た上で標準化利用比を求め、距離や各町丁の社会経済的状況との関連を検討する必要があると思われる。
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