本研究の目的は、骨密度と栄養素等摂取の断面研究及び後ろ向きの縦断研究である。当初の研究計画に基づき、本年度は1998年度の成人健診について65歳以上の高齢者について断面研究を実施し、1998年、1993年、および1988年の健診結果を、1つにまとめデータベース化した。 骨密度の成績から、33%タイル値、67%タイル値でL、M、H群と3区分し、1988年および1998年の栄養素等摂取量について各群で検討した。 (1)1998年時点の対象者の特徴:年齢は男女とも、M、H群に比べL群で有意な高値を示した。またBMIは、男性はL群に比べM、H群で、女性はL、M、H群の順に有意に高値であった。(2)1998年時の栄養素等摂取状況:男性は、食物繊維摂取量がM群に比べH群で有意に高値であった。その他の栄養素については有意な差は認められなかった。女性は、エネルギー、たんぱく質、動物性たんぱく質、カルシウム等いくつかの栄養素がL群に比べM、H群で有意な高値であった。(3)1988年時の栄養素等摂取状況:男性は、動物性たんぱく質、カルシウム、リンの摂取量がL群に比べM群で有意に低値であった。女性は、カルシウム摂取量がL群に比べH群で有意に高値であった。(4)1998年時の食品群別摂取量:男性は、めん類が、L群に比べM群で有意に高値であったが、牛乳・乳製品は各群で有意差はみられなかった。女性は、どの食品群にも有意差はみられなかった。(5)1988年時の食品群別摂取量:男性は砂糖類がL群に比べM群で有意に高値で、魚介類、牛乳摂取量はL群に比べM群で有意に低値であった。女性では、油脂類がL群に比べM群で有意に高値で、牛乳摂取量がL群に比べH群で有意に高値であった。 以上より1988年時の栄養素等摂取状況は各群ともほぼ同水準であるが、1998年は特に女性において、骨密度が高い者で栄養素等摂取状況の高い傾向が伺え、加齢に伴う骨量減少の抑制には十分な栄養摂取が必要であることが示唆された。
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