Elastase IIIのサンドイッチ酵素免疫測定法を利用した膵臓損傷の免疫学的証明法の開発を目的とし、本年度は、1)ヒトElastase IIIの分離精製、2)抗ヒトElastase IIIの測定系の開発、3)臓器特異性の検討について行った。ヒト膵Elastase IIIは、膵臓抽出液から各種クロマトグラフィー法[アフィニティークロマトグラフィー(Lima Bean Trypsin Inhibitor-Sepharose 4B)、陽イオン交換クロマトグラフィー(Methyl Sulphonate Sepharose)、ゲル濾過(Ultrogel AcA 54)]によって精製した。この精製した分画は、SDS-PAGE及び等電点電気泳動像から単一であることが示され、N末端アミノ酸配列分析法で同定したところ、Elastase IIIBであることが明らかとなった。次いで単離したヒトElastase IIIBをウサギに免疫し、抗ヒトElastase IIIB IgGを得た。さらに石川らのマレイミド・ヒンジ法に従って、Fab'-HRP複合体を調製し、サンドイッチ高感度酵素免疫測定法を開発した。開発した測定系の検出限界値は0.3pg(10amol)/tubeであり、0.3pg(10amol)/tubeから90pg(3fmol)/tubeの範囲で定量が可能であった。測定系を使用し、各臓器(膵臓、脳、心臓、肺臓、肝臓、腎臓、脾臓、骨格筋)との交差反応性を検討したところ、総蛋白質濃度1μg/mlにおいて、膵臓は蛍光強度で1120を示し、その他の臓器では検出限界以下であった。よって本測定系は他臓器との交差反応は認められず、膵臓とのみ反応していることから、膵臓損傷のマーカーとして有用であることが示唆された。 更に上記の結果は、2編の論文にまとめた。
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