研究概要 |
慢性関節リウマチ(RA)の関節滑膜における特異的発現遺伝子をdifferential display法により検討した。11の同定された候補遺伝子断片のうち、興味深いものとしてinhibitor of differentiation 1(ID1)遺伝子を検討した。ID遺伝子はID1-4のファミリーを成しており、細胞の分化、増殖や血管新生において重要な遺伝子として注目されている。我々は、ID1およびRAの疾患感受性遺伝子領域の一つである1p36に位置するID3について滑膜でのmRNAの発現を半定量的RT-PCRで検討した。結果、RA13例の滑膜では変形性関節症(OA)6例に比較して平均でID1は9.6倍、ID3は3.3倍と有意な発現増強が認められた。また、蛋白レベルでのIdの発現増強と局在について免疫組織染色を行ったところ、RA滑膜において滑膜(線維芽)細胞におけるId1およびId3の発現の増強が確認された。 ID遺伝子のRAに対する疾患感受性を検討する目的で、ID3遺伝子の遺伝子多型を検索した。健常者93例、RA88例、全身性エリテマトーデス30例では、イントロン1に1か所(IVS1+19A>G)、エクソン2に1か所(c.313G>A:p.A105T)、エクソン3の非翻訳領域に2か所(c.^*144A>G,c.^*260T>C)の多型を見いだした。このうちエクソン2の多型はアミノ酸置換を伴う多型で、RA患者に1例のみ見られた。いずれの多型も有意な疾患関連は認められなかった。現在、ID3の発現を調節するプロモーター領域の多型を検索中である。
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