研究概要 |
申請者らが見い出した、non-peptideのプロテアーゼ阻害剤(UIC-94003)は、既存のプロテアーゼ阻害剤より10-100倍抗HIV効果が高く、毒性も低い。MT-2cellsを用いたMTT assayで抗ウイルス効果を測定すると、ritonavirやindinavirといった現在臨床で使用されているプロテアーゼ阻害剤のIC_<50>(50%ウイルス抑制濃度)が、0.02-0.05μMであるのに対して、このUIC-94003のIC_<50>は0.0004μMであり、約100分の1の濃度でウイルスを抑制することが分かった。この新規のプロテアーゼ阻害剤が、申請者らが患者から分離してきた多剤耐性HIV-1(ほぼ全種類の現在使用可能な抗HIV薬に対して耐性となっている臨床分離株)にも有効であることを確認した。また、同時にin vitroでMT-2cellsにwild typeのウイルスを感染させ、その培養上清中に加えたUIC-94003の濃度を徐々に上げていき、UIC-94003耐性ウイルスを誘導することにより、この薬剤の耐性変異プロフィールを検索したところ、基本構造の似ているamprenavirに比べ耐性獲得に要する時間が2倍以上必要であった。また、今まで一度も報告されたことのなかった、プロテアーゼの28番目のアラニンがセリンに置き換わっていることも分かった(Yoshimura K.,Kato R.,Maeda K.,Mitsuya H.:現在投稿中)。UIC-94003は、多剤耐性ウイルスに対してもwild typeと同等の抗ウイルス活性を示していることから、既存の薬剤に対し耐性を獲得したウイルスにも有効である可能性が高く、また低濃度で著しい抗ウイルス効果を示すことから、今後の臨床応用に向けて有利な特徴を多く有していると言える。今後より詳細に、薬剤耐性のメカニズムと薬剤の構造の関係を調べることにより、新しいプロテアーゼ阻害剤開発の方向性を示すことができるのではないかと考える。
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