研究概要 |
炎症性疾患をはじめとする種々の病態形成において、各種サイトカインが重要な役割を担っていることが、次第に明らかに成りつつある。しかし、生体内には微量しか存在せず、現在の測定法では必ずしも満足できる感度が得られないため、基準値の設定や臨床的意義を充分検討できていないサイトカインも多い。これまで我々は、ELISA法の感度を、定量性を損なうことなく向上させるために、Immuno-PCR法によるTNFの高感度検出系を開発し、従来のELISA法に比べ約50,000倍の検出感度を持つこと、基準値が従来法における測定下限(数十pg)より約1/1,000低い範囲にあることを、それぞれ明らかにしてきた。そこで本年度は、(1)筋ジストロフィー(DMD)患者における血清TNF-α濃度を測定した。その結果、DMD患者の平均血清TNFα濃度は27.8±113.4pg/mlと、健常者の基準値(0.027±0.054pg/ml)に比べ著明な高値を示した。そこで、筋組織の崩壊が完成する20歳未満と20歳以上の2群に分け、血清TNFα濃度を比較検討した。その結果、20歳以上の群では12.9pg/mlであったのに対し、20歳未満では60.7pg/mlと約5倍高値を示した。すなわち、TNFαがDMDの病態形成に密接に関与していることが示唆された。(2)潰瘍性大腸炎およびクローン病患者における平均血清TNFα濃度は、健常者に比べそれぞれ約1,100倍、7,700倍高値であった。また、血清TNFα濃度は、活動期に比べ非活動期では明らかに低下し、その推移は病態を良く反映していた。(3)IL-18についても、ELISA法に比べ約15,000倍の感度上昇が可能であった。今後、担癌患者やAIDSを含む免疫不全症など、IL18の低下が病態形成に重要な役割を果たしていると推測される疾患を対象に、病態生理学的意義を調べる予定である。
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