研究概要 |
慢性関節リウマチ(RA)病変の主体は関節滑膜細胞の増殖とそれに伴う単核球の浸潤にあり、RA関節液中には,これらの細胞からIL-6,IL-8など種々のサイトカインが大量に産生され,慢性炎症の持続およびその拡大と関節軟骨の破壊に寄与している。これらのサイトカインの遺伝子が同定され,その遺伝子発現調節に重要な因子としてNF-κBの関与が明らかになった。一方、Peroxisome-proliferator-activated receptor(PPAR)は、核内レセプタースーパーファミリーの一員として単離され、ヒトでは、α,δ,γのサブタイプがすでに報告されている。PPARγのリガンドであるチアゾリジン誘導体は、最近、HeLa細胞においてNF-κBによる転写活性化を抑制することが示された。本研究では、慢性関節リウマチ(RA)の病態形成におけるPPAR-γの機能を解析し、PPAR-γリガンドによるRAの治療への適応の可能性を検証することを試みた。複数のRA患者滑膜組織から確立した培養滑膜細胞から総細胞抽出液を抽出し、PPAR-γのモノクローナル抗体を用いてWestern blotによってPPAR-γの発現を蛋白レベルで確認した。培養滑膜細胞から炎症のメデイエーターであるサイトカイン(IL-6,IL-8,GM-CSFなど)が産生され、PPAR-γリガンドである、prostaglandins(delta PGJ2,PGJ2,など)やチアゾリジン誘導体(Troglitazone,Pioglitazoneなど)によってその産生が抑制されることを発見した。培養滑膜細胞に細胞障害性を与えるか否かをXTTアッセイを用いて検証し、PPAR-γリガンドが細胞障害性を示さない濃度でサイトカイン産生を抑制することを確認した。今後は、RAの病態に関与する破骨細胞の作用をNF-κBを介してPPARγリガンドが抑制することを検証し、RAの動物モデルなどを用いて、RA治療の可能性をさらに研究していく方針である。
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