1、平成13年度は前年度に引き続き膵癌細胞株(AsPC-1、MIAPaca-2、PANC-1)を用いてin vitroにおける検討を行った。いずれの細胞株もセラミドの細胞膜透過型アナログであるC2セラミドおよびスフィンゴシンにより濃度依存性にアポトーシスが誘導された。既報の中性スフィンゴミエリナーゼを肝cDNAライブラリーからPCRにより増幅し、発現ベクターPCDNA3にサブクローニングし(nSMase/PCDNA3)、nSMase/PCDNA3を膵癌細胞株に遺伝子導入した。G418により遺伝子発現株を選択し、限界希釈法によりクローニングし安定発現株を樹立した。nSMaseの遭伝子導入株は親株に比べて抗癌剤などのアポトーシス誘導刺激に対して感受性の高い傾向が認められた。 2、癌細胞が抗癌剤などによるアポトーシス誘導を回避する機序としてsurvivinが注目を集めているが、その発現が膵癌において亢進していることをin vitroならびに手術標本を用いた検討により明らかにした。さらに、膵癌におけるアポトーシス誘導機序としてtumor necrosis factor-related apoptosis-inducing factor(TRAIL)発現を検討し、その受容体発現が正常膵には認められず、膵癌にのみ認められることを明らかにした。 3、前年度、膵癌細胞株においてセラミドがIL-8の産生を誘導することを明らかにしたが、その発現調節には転写因子NF-kBが主に、AP-1が一部関与していた。セラミドによるIL8産生誘導は膵癌細胞のみならず、血管内皮細胞や胃癌細胞株をはじめ広範囲の細胞株で認められた。C2セラミドによるIL-8産生誘導は、胃粘膜上皮細胞においては、胃炎、胃潰瘍治療薬であるrebamipideにより抑制された。その機序としてNF-kB活性化抑制のみならず、MAP kinasesの活性化抑制も関与していた。以上の結果より、セラミドによるシグナル伝達経路がアポトーシス誘導のみならず抗炎症という観点からもターゲットになりうることが明らかになった。
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