研究概要 |
p53がん抑制遺伝子ファミリーの新たな遺伝子として研究代表者らはp51/p63を単離した(Osada et al., Nature Medicine 4:839,1998)。P53がん抑制タンパク質は、DNA損傷に応答して核内に蓄積し、細胞周期停止またはアポトーシスを誘導することにより発がん防御に作用すると理解されている。研究代表者は、p51/p63遺伝子産物による発がん抑制や細胞増殖調節の作用を明らかにすることを目的とし、p51A/TAp63γ分子がp53分子と同様にUV照射や薬剤によるDNA損傷に応答して細胞内に蓄積する性質を持つかどうか、また、その際細胞周期停止因子p21^<waf1>遺伝子の発現や細胞の生存や分化に影響するかどうか否かについて検討することとした。さらに、細胞内蓄積および転写活性化の分子機構を検討した。その結果、p51A/TAp63γタンパク質はDNA損傷に応答して細胞内に蓄積されること、またその際にp21^<waf1>の発現や細胞分化を誘導し得ることを明らかにした。さらに、DNA損傷に対するp51蛋白の応答を検討したところ、TA型、deltaN型いずれのアイソフォームも安定化されることが明らかになった。また、その蛋白の安定化にはTA型、deltaN型ともにp51のアミノ末端側の配列が重要であることも明らかになった。TA型p51はp53のmdm2結合領域とホモロジーを保っておりプロテアソーム依存性に蛋白が分解されるが、ユビキチン化にはmdm2ではない分子が関わっている。加えてDNA損傷以外の、酸化的ストレスなどによるp51分子の活性化機構についても検討を進めている。
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