肝臓の線維化で、細胞外マトリックスの産生・分泌に大きく寄与している肝星細胞に注目し、細胞内の低分子量G蛋白質のメチル化を検討した。ラット肝70%部分切除後、経時的にコラゲナーゼ灌流法により星細胞を分離し、メチル化される蛋白質を検討したところ、GTPの添加によりメチル化が増強される、低分子量G蛋白質のメチル化の増加が検出された。その分子種を同定するために、低分子量G蛋白質のうちRas及びCdc42に対する抗体で、メチル化蛋白を免疫沈降させたところ、Cdc42が、特に豊富にメチル化されていることがわかった。また、Rasも肝切除後そのメチル化が増加していた。この2つの他にもメチル化が増加している低分子量G蛋白質が存在する。 次に、肝切除後の再生肝から分離した星細胞の機能を検討するために、各時点での星細胞のRNAを分離して、コラーゲン、ラミニン、MMP-2、TIMP-2についてRT-PCRを行ったところ、低分子量G蛋白質のメチル化が増加した6日目をピークとして、コラーゲン合成などが上昇していることが示唆された。 以上のことより、部分肝切除後の再生肝内で実質細胞の増殖に引き続いて星細胞が増殖し、実質細胞のクラスターに新しい類洞を形成する段階の、突起の伸長、結合組織分解、あるいはコラーゲン合成分泌の過程に、低分子量G蛋白質のメチル化が関与していることが明らかとなった。 さらに、星細胞の個々の機能に対するこれらの関与を明らかにするために、低分子量G蛋白質の中でも豊富に存在し、メチル化も強かったCdc42に着目し、ヒト肝間葉系腫瘍由来の培養星細胞株であるLI90を用いて、cdc42のsense及びantisense oligo DNAを導入して細胞の変化を検討した。その結果、培地内に添加した、ビタミンAの細胞内貯蔵にCdc42が関与していることが示唆され、現在そのほかの機能についても検討中である。
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