研究概要 |
我々は、先にサイトメガロウイルスプロモーターの下流にRenilla luciferase(R-luci),HCVの5′NTR,Firefly luciferase(F-luci)の順で遺伝子を組み込んだベクターを作成し、この遺伝子を恒常的に発現しているHuh-7由来細胞を樹立した。この樹立細胞では、R-luciは通常の真核生物の蛋白翻訳機構であるキャップ依存性に、F-luciはHCVの5′NTRによりIRES依存性に翻訳される。この樹立細胞を用いた検討でHCVの蛋白翻訳効率は細胞分裂期で高いことを見いだしている(Gastroenterology 118,152-162,2000)。今回、インターフェロン及び二本鎖RNA(Poly I:Poly C)処理によりIRES依存性蛋白翻訳が特異的に抑制されることを見いだした(Prepared for submission)。この作用メカニズムを解明するため、インターフェロンによる、2-5AS(oligoadenylate synthetase)活性の誘導、PKR(2本鎖RNA依存性プロテインキナーゼ)の活性化、及びHCV-IRESを活性化させる宿主蛋白であるLa protein、及びPyrimidine tract binding protein(PTB)の発現を検討した。インターフェロンの投与により2-5ASは著名に上昇したが、Poly I:Poly C投与では活性の上昇は顕著でなかった。PKRの発現はインターフェロン、Poly I:Poly C投与で上昇したが、トランスフェクションによるPKR発現過剰状態ではIRES活性の特異的抑制は見られなかった。一方、IRES活性化因子のLa proteinはインターフェロン、Poly I:Poly C投与で発現が著名に抑制され、PTB及びコントロールとして用いたアルブミンの発現には変化が認められなかった。以上より、インターフェロン、Poly I:Poly Cによる特異的IRES活性抑制はLa proteinの発現抑制(恐らくは早期アポトーシスによる)によることが推察さ、インターフェロンの新しい抗ウイルス効果の存在が示唆された。
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