マウス(mongolian gerbil)に、Helicobacter pylori(H.pylori)菌株の接種を試み、H.pyloriの(持続)感染が、安定的且つ確実に成功するか否かを検証した。接種する菌株はATCCから購入した標準株とした。これを、微好気高湿度で液体培養することで菌のvaiabiltyを高め、10^8から10^9/mlに調整して経鼻チューブでマウスの胃内に直接接種した。接種後1週目、2週目、8週目にマウスをと殺し、H.pylori感染状況を調べた。然るに、全例において本菌の感染を認め、H.pylori定着・持続感染のマウスモデルを確立した。本研究の目的は、H.pylori感受性遺伝子を探索しと、さらにそれを同定し得れば、機能解析をも遂行することである。H.pylori菌側の病原因子として、cagA遺伝子が知られており、しかも同遺伝子群がコードする蛋白が宿主反応(サイトカイン産生誘導などの炎症・免疫反応や細胞増殖)に密接に関与しているとの報告などから、cagA遺伝子を保有するcagA+菌株と欠失したcagA-菌株を各々マウスに感染させ、その反応性を比較することにした。実験は8週令のマウスに、先述した液体培養法にてcagA+、cagA-菌を同様に調整し、モデルを作成した。 これを経時的にと殺していき、胃標本を採取した。途中経過では、cagA+株のマウス胃粘膜では、炎症反応や細胞増殖が亢進していた。一方cagA-株では胃内の炎症は乏しく、増殖反応も限局していた。興味深いことにアポトーシスはむしろcagA-株で亢進していた。さらにcagA-株では胃内の細菌定着が弱い傾向がみられた。このことは同遺伝子(とその産物)が本菌感受性に関わる菌側の因子である可能性を示唆している。
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