研究概要 |
本研究では、C型肝炎ウイルス(HCV)等のウイルス感染による肝炎発症・慢性化と宿主側免疫応答との関連を解明し、治療法開発・病態解明に役立つ新知見を得るため、新しい解析方法であるHLA tetramer法の構築と応用を目的としてきた。 1.HLA tetramerの作成。 本研究では日本人に最も多いHLA-A24を対象としてA24 tetramerの作成を行った。リコンビナントHLA-A24・β2マイクログロブリンとペプチドを混合して複合体を生成させ、ビオチン化・精製、4量体化した。試行実験を繰り返して最終的にA24 tetramerの安定した作成に成功した。EBウイルス(EBV)のHLA-A24拘束性細胞障害性T細胞(CTL)エピトープを用いたA24 tetramerでその有効性を確認し、TTウイルス(TTV)抗原を用いてtetramerを作成した。 2.TTV感染・既感染者血液中のT細胞の解析。 実際の解析は主にTTV, HCVに関して開始した。HLA-A24拘束性の抗原エピトープの情報がないため、まずエピトープの検索を行った。特にTTVは高率に持続感染をするが、宿主側の細胞性免疫応答が存在するか否か自体が不明である。解析の結果、少なくとも3つのHLA-A24拘束性の抗原エピトープを発見し、これらを認識するCTLの誘導に成功した。これらは従来のCTL誘導法では検出不可能であり、HLA tetramer法によって初めて確認できたCTLである。 3.TTVタンパク質リン酸化の解析 TTVタンパク質の1つがリン酸化タンパク質であることを見いだし詳しく解析した。その結果、HCVのリン酸化タンパク質であるNS5Aとよく似たリン酸化修飾を受けていることが明らかとなり、宿主細胞機能修飾を行う可能性が考えられた。そこで、TTVが感染者の免疫系細胞中に存在しているかどうかを検討し、顆粒球と単球中に多く存在していることを明らかにした。TTV抗原に反応するCTLが存在する事実と、それにも関わらず高率に慢性化する点を考慮するとウイルスタンパク質が免疫能を修飾している可能性が考えられる。
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