研究概要 |
肝類洞内皮細胞のpericyteである肝星細胞に対するVEGFの作用を肝類洞血流調節の関連で検討した。ラットより単離して3日間培養したquiescentに近い星細胞は,VEGFR-1(flt-1)とVEGFR-2(KDR/flk-1)の発現が認めた。さらに,10日間培養した活性化星細胞では,VEGFR-1の発現が高度になったが,VEGFR-2の発現は減弱した。活性化星細胞にVEGFを添加すると,平滑筋αアクチンの発現が濃度依存性に低下し,その収縮が抑制された。従って,VEGFはVEGFR-2を介して活性化星細胞に作用し,その収縮を抑制することで肝血流を調節していると考えられた。 類洞内皮細胞ではVEGFに由来する細胞内シグナルはPKC,MAPK系を介するとされる。活性化星細胞も10%FCS存在下ではMAPKがリン酸化され,これはPKCの特異的阻害薬であるGFXにより抑制されたことから,同様のシグナル系が存在することが判明した。しかし,活性化肝星細胞のDNA合成はGFX添加により抑制されたが,更にVEGFを添加するとこれが回復した。従って,活性化星細胞におけるVEGFを介する細胞内シグナルは類洞内皮細胞と異なりPKC・MAPK以外の系を介して伝達されると考えられた。現在,このシグナル系と収縮能の関連も検討を進めている。
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