本研究の目的は我々が新たに作製した高分化型肝癌細胞と融合樹状細胞の融合細胞移入によるマウス自己免疫性肝炎(AIH)モデルに出現する、正常肝細胞を認識する抗体の認識抗原を同定し、未だ同定されていないAIHの疾患特異的自己抗原を明らかにすることである。さらに、本抗体の抗体依存性細胞障害(ADCC)を介した肝細胞障害への関与も検討した。 1)モデルマウスの血清抗体の正常肝細胞、hepa1-6細胞との反応性の検討 肝障害が出現したマウスの血清IgG分画をプロテインAカラムで分離、免疫蛍光抗体法にて正常肝細胞およびhepa1-6細胞との反応性をin vitroにて確認した。 2)抗体が認識する正常肝細胞膜抗原、肝癌細胞膜抗原の解析 放射性ヨードラベルした精製IgG分画と、正常肝細胞およびhepa1-6細胞の可溶性膜分画を用い免疫沈降を行い、抗体が結合する正常肝細胞膜抗原、hepa1-6細胞膜抗原の分子量を試みたところ、抗体は分子量がs-100蛋白に近似した蛋白を抗原として認識していることが示された。 3)認識抗原のアミノ酸配列解析とアミノ酸配列データベースを用いた抗原の解析 上記の免疫沈降法にて得られた対応抗原タンパクを切り出し、シーケンサーを用いてアミノ酸分析を施行中で、今後は得られた結果をアミノ酸配列データベースを参照に解析し、既知のタンパクと同一性があるか検討する予定である。
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