研究概要 |
肺疾患モデルマウスにおいて(1)アデノウイルスベクターによる気道上皮細胞,血管内皮細胞各々に特異的な遺伝子発現モデルを作り,(2)このモデルでプロスタグランジン系合成酵素を各細胞に発現させ,これらの脂質メデイエイターの産生がどう病態に影響するかを解析するための準備として本年度以下の研究を行った. 実験1:ベクターの構築とin vitroでの基礎実験 1-(1)組織特異的なプロモーターの導入 気道上皮特異的なプロモーターSLPI遺伝子プロモーターにlacZ遺伝子をつないだプラスミドコンストラクトを構築し,気管支上皮細胞BEAS-2Bに導入し,組織特異的な発現を確認した. 1-(2)TXA2合成酵素遺伝子(TXAS)のアデノウイルスベクターへの導入 水口らの方法でTXASをアデノウイルス発現ベクターに導入した.1×10^5個のA549細胞に1〜20moi感染させin vitroでの増殖を検討し,用量依存的に増殖を抑える結果が得られた. 実験2:レポーター遺伝子を有するベクターを使ったin vivo実験 lacZ遺伝子を発現するアデノウイルスベクターをマウスの気管内投与し3日後肺を摘出,組織学的にlacZ遺伝子の発現を確認した.さらにラットHGF遺伝子発現アデノウイルスベクターを用いた実験で,経気管投与は経頸静脈投与より,投与3日後の検討で,肺での発現効率が3倍高く,経気管投与では肝臓,腎臓に比べ,肺での発現効率は肝臓,腎臓の10倍だった.経時的な検討では経気管投与3日後で発現は4倍,7日後で4.5倍,14日後で2倍だった.得られた肺に特異的発現させるための投与条件の基礎データを元に,PG系合成酵素遺伝子導入実験を次年度行う予定である.
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