研究概要 |
転移関連遺伝子の発現が遠隔転移形成に与える影響をNK細胞除去SCIDマウスを用いて検討し、さらにその発現に重要な各種転写調節因子の腫瘍細胞における質的・量的変化について解析した結果、以下の諸点を明らかにした。 1.癌細胞におけるKAI1/CD82の転移抑制効果には宿主側のエフェクター細胞が関与し、血中からの排除が不十分な場合にはKAI1/CD82の発現は遠隔転移形成を促進する。 2.転移関連遺伝子のKAI1/CD82、MRP/CD9は炎症性サイトカインによって異なる発現調節を受け、宿主の微小環境の変化に伴い腫瘍細胞における発現が変動する。 3.KAI1/CD82の発現調節にはp53以外にもNF-kappaBが重要な転写因子として機能しており、その阻害剤や細胞内抑制蛋白の遺伝子導入は KAI1/CD82の発現を抑制する。 4.腫瘍細胞におけるKAI1/CD82の発現は抗癌剤などの治療によっても変動する。 今後は、高転移ヒト肺癌細胞株において各種転写調節因子(NF-kB,HIF etc.)の阻害剤やアンチセンスオリゴヌクレオチドの遠隔転移に対する影響を検討し、転移関連遺伝子群の発現との関連を総合的に検討する。さらに、アデノウイルスベクターでの遺伝子治療の基礎実験へと展開する予定である。
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