研究概要 |
平成12年度は、培養細胞を用い、in vitroにおけるPARP阻害剤の各種転写因(NF-kB,AP-1,CREB)への活性抑制に関する検討を施行した。II型肺胞上皮細胞由来の肺癌株であるA549細胞を用い、PARPのwild typeおよび活性部位に変異を有するdominant negative typeの発現vectorによるstable transfectantを作製後、pre-inflammatory cytokine(IL-1β+TNFα+IFNγ)およびオキシダント(H_2O_2)による炎症性刺激を施行、その後、核蛋白を抽出し、NF-kB,AP-1,CREBのDNA結合部位を有するoligonucleotide probeによるelctrophoretic mobility shift assay(EMSA)を施行し、得られるbandのintensityの強弱をmock plasmidのstable transfectantより得られて結果とdensitmetryを用い、比較したところ、NF-kBにおいて、wild typeのstable transfectantにおいて、dominant negative,controlと比較し、刺激の種類に関係なく約4倍のintensityの増強が認められた。AP-1,CREBにおいては明らかな差は認められなかった。以上より、PARPの活性化が、NF-kBの活性化を増強することが明らかとなった。次に2種類のPARP阻害剤(nicotinamideおよび3-aminobenzamide)を使用し,A549細胞を用いて活性抑制の効果を検討した。NF-kBのbinding siteを上流域にもつluciferase reporter plasmidを作成し,A549細胞にtransient transfectし,その後2種類のPARP阻害剤をそれぞれ1,2,4,6,8,10nMで1hr処理した後,IL-1β+TNFα+IFNγおよびH_2O_2による炎症性刺激を施行したところ,刺激の種類に関係なく,3-aminobenzamideを用いた群において,濃度依存的にluciferase活性の減弱が認められた。また,同様にPARP阻害剤1hr処理した後,各種炎症性刺激を施行し核蛋白を抽出。その後,NF-kBのDNA結合部位を有するprobeを作成後,EMSAを施行したところ,3-aminobenzamideを8,10nM使用した場合にbandのintensityが約1/3に減弱した。A549細胞以外にもマウスのmacrophage cell line MH-S細胞においても同様の結果が得られた。以上の実験結果より,in vitroにおいてPARP阻害剤(3-aminobenzamide)により,NF-kBの活性化の抑制が認められることが明らかとなった。
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