食道癌由来の扁平上皮細胞株(KE-4)cDNAライブラリーより、自家の細胞傷害性T細胞(KE-4CTL)が認識している抗原ペプチドをコードしている遺伝子が久留米大学においてクローニングされ、cyclophilin B遺伝子が同定された。すでに本大学の倫理委員会の承認を得たプロトコールに準じて上記サイクロフィリンB抗原ペプチドをインフォームドコンセントの得られた肺癌患者にフロインド不完全アジュバントとともに筋注し、有害事象の観察および肺癌患者末梢血のサイクロフィリンB特異的CTLの誘導および解析を、投与前後の末梢血を用いて限界希釈法により行った。12例の肺進行癌患者の皮内に、CypB_<91-99>あるいはその置換ペプチドを各々6例ずつ投与し、2週間おきに合計3回フロインドの不完全アジュバントとともに投与した。CypB_<84-92>の場合は、事前の皮内反応で6例中6例、およびその置換ペプチド6例中4例で即時型反応が認められたために残りの2例のみに投与した。大部分の患者で、血清中にCypB84-92に対するIgE抗体が検出され、CypB_<91-99>を投与することによって減少した。CypB_<91-99>あるいはその置換ペプチドを投与した患者末梢血液では、それぞれの抗原ペプチドあるいは癌細胞株反応性のCTL前駆細胞検出頻度の上昇が認められた。置換CypB_<91-99>を投与した場合は、6例中5例に癌細胞および正常細胞の両者に対してHLA非拘束性に細胞傷害活性を持つ細胞がin vitroで誘導された。以上のことから、CypB_<91-99>ペプチド抗原がその他のペプチドよりも、HLA-A24の肺癌患者に対する癌ワクチンとして推奨できることが示唆された。
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