研究概要 |
久留米大学においてcyclophilin Bが癌拒絶抗原遺伝子として同定され、すでに本大学の倫理委員会の承認を得たプロトコールに準じてcyclophilin B抗原ペプチドをインフォームドコンセントの得られた高度進行肺癌患者(stageIII-IV)にフロインド不完全アジュバントとともに筋注し有害事象の観察および肺癌患者末梢血のCyclophilin B特異的CTLの誘導および解析を、投与前後の末梢血を用いて限界希釈法により行った。CypB_<91-99>あるいはその置換ペプチドを各々8例ずつ皮内投与し、2週間おきに合計3回フロインドの不完全アジュバントとともに投与した。 CypB_<91-99>あるいはその置換ペプチドを投与した患者末梢血液では,それぞれの抗原ペプチドあるいは癌細胞株反応性のCTL前駆細胞検出頻度の上昇が認められた。置換CypB_<91-99>を投与した場合は、6例中5例に癌細胞および正常細胞の両者に対してHLA非拘束性に細胞傷害活性を持つ細胞がin vitroで誘導された。また、6例のCypB_<91-99>を投与した群と7例の置換ペプチドを投与した群のoverall survivalを比較したところ前者の方が長いことが示唆された。以上のことから、CypB_<91-99>ペプチド抗原がその他のペプチドよりも、HLA-A24の肺癌患者に対する癌ワクチンとして推奨できることが示唆された。これらの解析からペプチドに対するin vivoでのCTLの誘導が6〜9週間以上かかることが明らかになったので、本大学で同定した約20種類のペプチドに対するT細胞の反応性をあらかじめ調べて、その応答が強いものから順に最大4種類を投与するプロとコールに変更し、現在臨床試験を行っている。
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