本研究では、虚血によって誘導される海馬神経細胞の遅発性神経細胞死と免疫系の活性化に対するFK506およびrapamycinの影響を検討し、その結果から免疫抑制剤の虚血障害に対する治療有用性とそのtherapeutic windowを模索することが目的である。 本年度は(1)TUNNEL法を用いたDNA fragmentationへの影響(2)FK506とrapamycinの細胞内受容体であるFK506 binding protein12(FKBP12)への影響(3)rapamycinのmTORを介したp70s6kinaseへの影響を検討した。 その結果、(1)rapamycin静脈内投与は、前脳虚血による海馬神経細胞の虚血性変化を形態学的には改善しないが、DNA fragmentationの程度を軽減する可能性があると考えられた。(2)FKBP12は前脳虚血によって発現が誘導されるが、海馬と梨状葉皮質ではその過程が異なることが示唆された。(3)リン酸化P70s6kinaseは海馬および梨状葉皮質に同様に発現し、虚血によって発現部位に差を生じないことが示唆された。 今後は、組織切片について、抗IL-1β・TNF-α・IL-6・GRO-α抗体を用いて免疫組織を行い各サイトカイン発現の経時的変化と薬剤による影響を検討する。以上の検討からFK506およびrapamycinのtherapeutic windowを決定する。
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