研究概要 |
目的:Natural killer細胞(NK細胞),Natural killer T細胞(NKT細胞),_<γ>δT細胞は免疫調節に重要な役割を担っているとされ近年注目されている.特に,IL-2反応性_<γ>δT細胞はNK細胞の役割を持ち,多発性硬化症(MS)ではこれらの細胞の重要性が注目されている.本邦では2000年、IFN-β1bがMSの治療薬として承認されるに至った.今回我々は.IFN-β1β療法を施行したMS患者において,これら免疫調節細胞の変化について比較検討を報告する.対象:IFN-β1β投与(2MIU〜8MIU:隔日皮下注射)を施行したMS患者9例(男性3例、女性6例),平均年齢39.2±13.7歳.臨床型はsecondary progressive MS 6例,relapsing-remitting MS3例.方法:IFN投与前と投与1ケ月後で以下を比較検討した.1.患者末梢血単核球(PBMC)を分離,FACSを用いCD56+CD16+細胞(NK細胞)、Vα24+Vβ11+CD3+細胞(NKT細胞),CD56+δ-1+CD3+細胞(NK_<γ>δT細胞)の陽性率を測定.2.分離した単核球をIL-2(100U/ml)添加で短期培養を行い,上記を測定.3.K562細胞を標的細胞,IL-2反応性T細胞をeffectoer細胞とし,E/T比10:1の細胞障害活性%をLDH定量法によって測定.4.PBMCよりtotal RNAを抽出,RT-PCR法でサイトカイン(IFN-_<γ>,IL-4)のmRNA発現を検討.結果:1.CD16+56+細胞(NK細胞)はIFN投与前後で23.2±17.6%→21.9±16.9%と変化なし.IL-2培養後は40.0±19.3%→44.4±21.9%と軽度増加.2.Vα24+Vβ11+CD3+細胞(NKT細胞)はIFN投与前後で0.026±0.023%→0.307±0.044と増加.IL-2培養後はIFN投与後、0.065±0.03→0.1±0.05%へ増加(p=0.4).3._<γ>δT細胞はIFN投与前後で5.9±3.6%→4.9±2.3%と低下(p=0.1)。IL-2培養でIFN投与後、37.2±41.3%→16.2±12.7%へ低下(p=0.1).4.CD56+_<γ>δT(NK_<γ>δT)細胞はIFN投与前後で2.3±2.7%→1.8±1.9%と変化なし.IL-2培養後ではIFN投与後,17.2±26.7%→8.4±12.0%へ低下した(p=0.2).5.IFN投与後、細胞障害活性%は25.2±20.3%→46.3±22.8%へ増加(p=0.1).6.サイトカインmRNA発現は、IFN投与前後ともに全例IFN-_<γ>のmRNAは発現,2例ではIFN投与後IL-4のmRNA発現も認められた.考察:IFN-β1β投与後にNK細胞,NKT細胞,IL-2反応性NK細胞,NKT細胞の増加により,NK細胞,NK T細胞のeffectorとしての細胞障害機能がIFN-βにより是正された可能性が示唆された.IFN-β1βによりIL-4のmRNAの発現が認められたことから,一部の症例ではTh2誘導が認められ、治療効果をきたしている可能性が考えられた.今後も継続して,これら免疫調節細胞の動態について検討を行う予定である.
|