1.糖尿病に伴う神経再生能障害に関する研究: ストレプトゾトシン投与10週後の糖尿病マウス(DM)ならびにその対照マウス(Control)を用いて、脊髄後根神経節(dorsal root ganglia(DRG))及び迷走神経節状神経節(nodose ganglia(NG))の形態・機能を以下の方法で検討した。 (1)光顕(Nissl染色、TUNEL法)ならびに電顕を用いた観察により、DMならびにControlのDRG、NGにおいては、細胞死、神経細胞・線維の脱落、変性等が生じていないことを確認した。 (2)RT-PCR法により、各神経節における神経接着分子(L1、NCAM)、神経栄養因子(NGF、IGF、GDNF、CNTF)等の発現を比較検討したが、DMとControlの間に有意な差はみられなかった。 (3)DRG及びNGをコラーゲンゲル内で器官培養し、軸索切断端からの神経突起再生を検討した結果、糖尿病マウスでは正常対照マウスに比べ、再生突起数が有意に多かった。このことから、従来のin vivoでの報告と異なり、我々のin vitroの系においては、糖尿病に伴い脊髄ならびに迷走神経求心性線維の再生能が亢進することが示唆された。これは機能修復にはつながらない無秩序な神経線維の再生ではないかと考えられる。現在はin situ hybridization法や免疫組織化学法を用いて、糖尿病マウスならびに対照マウス各培養神経組織での神経接着分子や細胞外マトリックス構成蛋白の発現変化を比較検討している。 2.老化に伴う神経再生能障害に関する研究: 24ヶ月齢以上の老化マウスならびに3ヶ月齢の若齢マウスを用いて、1)と同様の手法で、DRG及びNGの形態・機能解析を始めた段階である。
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