1.アデノウイルス・ベクターの作成 従来の培養血管平滑筋細胞ではアンジオテンシンIIタイプ2受容体の発現が低く、その情報伝達を検討することは困難であった。しかし、アデノウイルス・ベクターを用いた遺伝子導入によって発現させることにより高い導入効率と均一な発現が期待され、細胞生物学解析が可能となる。そのため応募者は、アンジオテンシンIIタイプ1受容体およびアンジオテンシンIIタイプ2受容体を培養血管平滑筋細胞に発現させるためのアデノウイルス・ベクターを作成した。このアデノウイルス・ベクターを用いた遺伝子導入によってアンジオテンシンII受容体を発現させ、ウエスタンブロット法を用いてその発現を確認した。 2.アンジオテンシンII受容体が血管平滑筋細胞の形質変換に及ぼす影響の検討 応募者はすでに、分化型形質を維持し、形質変換のメカニズム解析に有用な培養血管平滑筋細胞系をモデルシステムとして確立している。この培養血管平滑筋細胞において、アデノウイルス・ベクターを用いた遺伝子導入によりアンジオテンシンIIタイプ2受容体を発現させ、アンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗薬あるいはタイプ2受容体拮抗薬の存在下、非存在下にアンジオテンシンII刺激を加える。胎児型(未分化型)と平滑筋型(分化型)ミオシン重鎖の発現量をウエスタンブロット法により、またカルポニン(分化型)mRNAの発現をノーザンブロット法にて調べることによって、アンジオテンシンIIタイプ2受容体が血管平滑筋細胞の形質変換に及ぼす役割を検討している。
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