研究概要 |
我々は冠攣縮性狭心症の病態の解明、ならびに動脈硬化危険因子と血管内皮機能との関係、およびエストロゲンの血管への作用について積極的に研究している。 器質的冠動脈病変を検出するための検査であるドブタミン負荷心エコーによっても冠攣縮が誘発されることを報告した(Kawano, et al. Am J Cardiol 85:26-30,2000)。 動脈硬化危険因子である高コレステロール血症患者では酸化ストレスが増加しており、血管内皮機能は低下していた。Nitric OxideのドナーであるL-arginineを投与すると、血管内皮機能は改善し、酸化ストレスも低下した(Kawano, et al. Atherosclerosis 2002 in press.)。高レムナント血症が女性の虚血性心疾患の予後に大きく関係していることを報告した(Fukushima H, Kawano H, et al. Am J Cardiol 88:1370-3,2001)。喫煙は酸化ストレスを増加させることで、全身の血管内皮障害を引き起こし、動脈硬化を進展させること、またこの血管内皮障害が、インスリン感受性の低下を引き起こすことを報告した(Hirai, Kawano, et al. Am J Physiol,279:H1172-8,2000)。これら喫煙による障害は、抗酸化剤投与により改善した。このように脂質代謝異常患者や喫煙者での動脈硬化進展には酸化ストレスの増加が関与している可能性がある。 閉経前女性では月経周期に伴う内因エストロゲンの変動に伴い血管内皮機能が変動しているが、異型狭心症の閉経前女性患者でも月経周期に伴う内因性エストロゲンの変動に伴い血管内皮機能および狭心症発作頻度が変動していることを明らかにした(Kawano, et al. Ann Intern Med,135:977-81,2001)。閉経前異型狭心症患者ではエストロゲンが低下してくる黄体末期から月経期にかけて狭心症発作が出現しやすい。エストロゲン補充療法を行う際には子宮体癌予防目的に黄体ホルモン製剤を併用するのが一般的である。閉経後女性に対するエストロゲン補充療法が血管内皮機能を改鞍するが、最もよく用いられているmedroxyprogesterone acetateがエストロゲンの血管内皮への作用を減弱させることを報告した(Kawano, et al. Am J Cardiol.87:238-40,2001)。
|