研究概要 |
心筋炎による慢性心不全例を対象とし、心筋内腫瘍壊死因子-α(TNF)および腫瘍壊死因子-α変換酵素(TACE)の発現について検討した。 1.対象:心筋炎(MC)14例(男性10例、女性4例、平均年齢37±5歳)および対照(CS)5例(男性3例、女性2例、平均年齢48±15歳)より採取した心筋生検組織を対象とした。重症MC6例(NYHA IV度)では、急性期および治癒期の2回心筋生検を施行した。 2.方法:心筋内TNFとTACE mRNAの発現量はReal-time RT-PCRにより定量化した。TNFとTACE蛋白の発現は免疫組織化学染色法により検索した。 3.結果:TNFとTACE mRNAの発現量は、CS群と比較しMC群で高値を示した(TNF/GAPDH:3.70±0.57vs0.04±0.02,p<0.05,TACE/GAPDH:3.70±0.57vs0.04±0.02,p<0.05)。MC群でのTNFとTACE mRNAの発現量には、正の相関を認めた(r=0.83,p<0.05)。重症MC例でのTNFとTACE mRNAの発現量は、2回目の心筋生検で1回目に比べ減少した(TNF/GAPDH:5.54±0.67vs3.33±0.52,p=0.03,TACE/GAPDH;4.36±0.29vs1.74±0.17,p<0.01)。TNFとTACE蛋白は、心筋細胞と炎症性細胞で陽性像を認めた。 TNFとTACE mRNAの発現量は、左室駆出率と負の相関(TNF:r=-0.85、TACE:r=-0.85)を認め、左室収縮末期径と正の相関(TNF:r=0.85、TACE:r=0.80)を認めた。また、TNFとTACE mRNAの発現量は、NYHA IIIおよびIV度の症例でIおよびIIと比較し有意に高値を示した。 4.結語:TNFとTACEの発現は、心筋炎の発症およびその重症度と関連することが示唆された。
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