1.アセチルコリン受容体の発現解析 CMG細胞におけるムスカリンM_1、M_2受容体の発現をRT-PCRにて解析した結果、M_1、M_2受容体ともに誘導後1週から発現し6週まで持続した。これは以前解析したβ_1、β_2受容体の発現様式と同様であり、心筋細胞としての表現形が完成した後に発現するものと考えられた。 2.受容体の機能解析 (1)α_1受容体 誘導後1週の細胞をα_1刺激薬Phenylephrine(10^<-4>M)で48時間刺激し、細胞肥大の有無を観察した。Phenylephrine刺激によりcell area、perimeterはそれぞれ42%、25%と有意に増加した。したがって、α_1受容体はCMG細胞の肥大に関与することが示唆された。 (2)β受容体 誘導後4週の細胞の収縮能(収縮長、収縮率、収縮速度)をビデオ記録して解析した。β刺激薬Isoproterenol(10^<-7>M)刺激により、収縮能はそれぞれ38%、27%、51%と有意に増加した。この増加はPropranololおよびβ_1選択的遮断薬CGP20712Aの前投与によりほぼ完全に抑制された。したがって、以前解析した拍動数の変化と同様に、Isoproterenolの陽性変力作用は主にβ_1受容体を介することが示された。 (3)ムスカリン受容体 アセチルコリン受容体刺激薬Carbachol負荷後の細胞内IP_3含量をラジオイムノアッセイで解析した結果、Carbachol濃度依存的にIP_3含量の増加を認め、10^<-7>Mで約32倍となった。この増加はムスカリン受容体非選択的遮断薬AtropineおよびM_2受容体選択的遮断薬AFDX116の前投与でほぼ同程度に有意に抑制された。したがって、CMG細胞におけるムスカリン受容体はシグナル伝達機能を有し、主にM_2受容体を介することが示された。
|