今年度は、ヒト・カベオリン-3(Cav3)cDNAをアデノウイルスに組み込み、Cav3を培養心筋細胞に過剰発現した際の、agonistによる肥大反応への影響を検討した。ウイルス量及び感染時間とCav3発現、cell viabilityとの関係を検討したところ、200 MOI、48時間までの感染では、cell viabilityに変化はなく、exogenous Cav3の発現量も豊富であった。新生児ラット培養心筋細胞に対しCav3とコントロールとしてのLacZ発現アデノウイルスをそれぞれ100 MOI感染させた。感染24時間後にGq依存性の肥大刺激であるphenylephrineまたはendothelin-1を添加し、さらに24時間後に[^3H]ロイシンの取り込み率、及び細胞表面積計測にて肥大の評価を行った。ウイルス非感染細胞では、上記agonistで有意な肥大を形成した。LacZウイルスは、agonistによる肥大形成に影響を与えなかったが、Cav3ウイルス感染によりロイシン取り込み率は約40%抑制され、細胞表面積増大は約30%抑制されていた。Gqシグナリングのどの部分をプロックするかを検討するために、ERK1/2のリン酸化を検討した。既報のように、両agonistとも有意にERK1/2のリン酸化を亢進させた。ERKリン酸化は、LacZの発現では影響を受けなかったが、Cav3の発現により有意に抑制された。これまでの結果から、心筋細胞においてCav3は内因性の肥大抑制因子として機能し、その機序としてERK1/2のリン酸化が関連している可能性が示唆された。来年度は、dominant negative Cav3をアデノウイルスへ導入し、心筋細胞肥大に与える影響を検討する。
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