トロンボスポンジン(TS)は血小板の活性化に伴って血小板内のα穎粒から放出され、血小板表面に結合する。この結合したトロンボスポンジンへの血小板粘着の生理的なモデルとして、我々は流血下血小板粘着解析装置を使用し血小板とガラス板表面にコートされたTSとの相互作用を検討した。 血小板は極短時間TS表面に留まるものの粘着固定化はしなかった。この一時的な結合は糖蛋白(GP)Ibに対する抗体(NNKY5-5)とvon Willebrand factor(vWf)に対する抗体(AJvW-2)により阻害され、血小板のGP Ibと血漿中のvWfがこの血小板とTSとの相互作用に関与していることが示唆された。 (一方血小板のコラーゲンレセプターであるインテグリンα2β1はこの相互作用に影響を及ぼさなかった。) これらの結果からvWfとTSの結合が血小板とTS表面との相互作用の第一段階であると推察される。また、表面プラズモン共鳴解析装置にてTSとvWfの解離定数3.97x10-7Mが得られた。 以上の結果から流血下において血漿中のvWfが固定化されたTSへ結合し、その結合したvWfへ血小板が結合するというモデルが推定された。 尚、血小板とTSとの弱い相互作用はTSに結合するvWfが低濃度であることによるものであると考えられた。
|