本研究の目的は、動脈硬化血管内皮へのGi蛋白遺伝子導入が、低下した内皮一酸化窒素(NO)産生能を改善し、動脈硬化病変形成を抑制するか否かを検討することである。最初に、Gi蛋白cDNAを組み込んだアデノウイルスベクターの作製を試み、以下のような成果を得た。 1.Gi α-2 coding regionのコスミドベクターへの挿入:Harvard大学Dr.Neerから供与されたGi α-2 cDNAを、コスミドベクター(pAxCAwt)に組み込んだ。 2.コスミドの構造と目的蛋白発現の確認:制限酵素処理により構築したコスミドの構造確認を行った。また293細胞へ感染させた後western blottingにてGi α-2の発現を確認した。 3.組換えウイルスの作製:発現の強いGi α-2コスミドベクタークローンを用いてCOS-TPC法により相同組換えを行い、組換えアデノウイルスベクターを作製した(1次ウイルス)。 4.ウイルスの構造確認:組換えウイルスゲノムDNAの正しい塩基配列を確認した。 5.ウイルスの調整:293細胞を用いて1次ウイルス液から2次・3次・4次液を調製した。 6.ECV304細胞へのウイルスの感染とGi α-2蛋白の発現確認:4次ウイルス液をECV304細胞に感染させた後western blottingを行い、Gi α-2蛋白の過剰発現バンドを確認した。 7.力価測定:プラーク形成法による4次ウイルス液の力価は1.3×10^7pfu/mlであった。 このようにG_I蛋白cDNA(G_<I-2a>)を組み込んだ組換えアデノウイルスベクターを完成させた。 今後は、ベクターの大量調製を行い、生体内でのGi蛋白遺伝子導入を試みる予定である。
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