研究概要 |
1.組換えアデノウイルスベクターの作製 Harvard大学Eva J, Neerから供与されたGiα-2coding region cDNAを、コスミドベクター(pAxCAwt)に組み込んだ。発現の強いGiα-2コスミドベクタークローンを用いて、COS-TPC法によりアデノウイルスゲノムDNAとの相同組換えを行った。制限酵素処理による構造解析では、正しい塩基配列を示した。 2.ベクターによるGiα-2蛋白過剰発現の確認 作製した組換えアデノウイルスベクターを用いてECV304細胞に遺伝子導入を行うと、Giα-2蛋白が時間依存的に過剰発現することをWestern blot解析によって確認した。 3.高力価ベクターの調製 293細胞を用いて高力価ベクターの大量調製を行った。プラーク形成法による最終的なベクターの力価は10^<10>pfu/mlであった。 4.ブタバルーン傷害冠動脈の再生内皮に対するex vivo遺伝子導入 ブタ冠動脈をバルーンで傷害し、4週間後に冠動脈を単離した。血管輪をベクターに30分間暴露させた後、CO_2インキュベーターで培養し、24時間後にorgan chamber装置で等尺性張力を測定した。バルーン傷害冠動脈では対照(非傷害)冠動脈と比較してα_2刺激薬UK14304及びセロトニンによるGi蛋白を介した内皮依存性弛緩反応が選択的に減弱していたが、Giα-2蛋白遺伝子導入を行うと、予備的な結果では、同反応が改善する傾向を示した。現在、NO産生能に及ぼす影響も含めて、さらなる検討を行っている。 以上のように、293細胞を用いた相同組換えにより、Gi蛋白cDNA(Giα-2)を組み込んだアデノウイルスベクターを完成させた。
|