成長ホルモン(GH)欠損症のGH治療ナかの脂質パラメーターの変化の解析 2種以上のGH分泌刺激試験に対するGH頂値が全て10ng/ml未満である特発性GH欠損症のうち、すでに36か月以上GH治療を継続している56例(男児43例、女児13例)について、GH治療開始時、およびGH治療中は治療開始後3か月ごとの、身長、体重、身長SDスコア(HSDS)、肥満度などの体格のパラメータ、および体脂肪率(%BF)、血清LDLコレステロール(LDLC)の経時的変化の相関関係について解析した。 GH治療中の36か月間のHSDSの変化(ΔHSDS)と6か月間の%BFの変化(Δ%BF)には有意な相関が認められた。しかし36か月間のLDLCの変化(ΔLDLC)はΔ%BFともΔHSDSとも相関しなかった。 GH受容体遺伝子P561T多型解析 特発性小児GH欠損症97例について、末梢血中の白血球よりgenomic DNAを抽出し、PCR-RFLP法にてGH受容体のP561T多型を同定した。GH受容体遺伝子のexon10を含む領域をPCRで増幅後、PCR産物を制限酵素StuIを用いて処理し、P561Tの有無によりwild homozygote(W)とmutant heterozygote(H)に分類した。 W群とH群でΔHSDS、Δ%BFに有意差を認めなかったが、ΔLDLCには有意差が認められた(P=0.0482、Mann-WhitneyのU検定)。すなわち、LDLCの変化はW群に比してH群で有意に小さかった。LDLCがW群でのみ顕著に変化したことが、ΔLDLCが他のパラメータの変化と相関しない一因であると考えられた。本多型は成長には影響せず、その役割は不明とされていたが、LDLC代謝に関係している可能性が示唆された。 なお、GH受容体遺伝子P561T多型頻度はW群92.8%、H群7.2%であった。これは文献上報告されている正常集団におけるGH受容体遺伝子P561T多型の頻度と比較して、統計学的に差はない。
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