研究概要 |
1.血小板凝集計による臍帯血の血小板凝集能について検討した。臍帯血ではADP,コラゲンでは健常成人の血小板に比較し血小板凝集の低下がみられたがリストセチンでは正常であった。 2.臍帯血を用いて、コーンプレート型回転粘度計を利用したずり応力惹起血小板凝集測定装置を用い、ずり応力惹起血小板凝集shear stress-induced platelet aggregation(SIPA)を測定した。 臍帯血のSIPAは低ずり(12dyn/cm2)では2.2±1.6%(正常13.5±11.9%)で高ずり(108dyn/cm2)では16.7±4.8%(正常34.0±10.5%)であり、ともに健常成人より有意に低下していた。 3.SIPAに影響を与える因子として、血小板側の要因としてはmonoclonal抗体を用いたflow cytemetryにて臍帯血血小板GPIbとGPIIb/IIIaの抗原量の測定、vWFマルチマー解析を行った。血漿側の因子としては臍帯血のvWF抗原量とフィブリノゲン量の測定のほか、ecto-ATPaseの関与につき研究を進めた。 臍帯血のvWF抗原量は平均値82%(範囲70〜90%)で健常成人では平均値110%(範囲90〜120%)と比較しやや低値であり、フィブリノゲン量も平均値130mg/dl(範囲100〜200mg/dl)と低値を示していた。vWFマルチマー構成は正常とほぼ同様であった。また、臍帯血血小板GPIbとGPIIb-IIIaの抗原量は正常と比較して量的な低下がほとんどなく、機能的にも正常と同等であった。 今後、胎盤絨毛刷子縁膜小胞に存在するADP分解活性とともに強力な血小板凝集阻害作用をもつecto-ATPaseの関与につきさらに研究を進めることにより子宮胎盤循環が新生児の血液凝固・線容に影響を与える機構の一つが明らかとなると思われる。
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