研究概要 |
本研究はイヌモデル血友病Aの遺伝子治療をめざして、イヌ第VIII因子蛋白についての研究をおこなうものである。本年度の研究実績は下記のとおりである。 1、イヌ第VIII因子抗原の測定系の確立。 約10000Bu/mlの高力価ヒト同種抗体を用いたサンドウイッチELISAで測定したイヌ血漿の第VIII因子抗原(FVIII:Ag)はイヌ血漿の100%でヒト血漿の約12.5%のODしか得られなかった。最近発売された第VIII因子の測定キットAsserachrome(Diagnostica,Stago)にて測定したところ、イヌ血漿でもヒト血漿同様のODを得られた。奈良医大小児科にて飼育中の血友病A犬のFVIII:Agは1%以下で重症型のcross-reacting material negativeであることが判明した。またこのキットで測定した正常マウス血漿のFVIII:Agは1%以下でマウスとのcross reactivityは無く、マウスを使用したイヌ第VIII因子を使った基礎的実験にもこの測定系は有効だと思われた。 2、イヌ第VIII因子蛋白の発現実験。 E1a,E1bとE3の部分を除いたアデノウイルスベクターpAxCAwt(TAKARA)にBドメインを除いたイヌ第VIII因子を組み込み293cell上でDNA-TPC法用いてイヌ第VIII因子を作るアデノウイルスを作製した。このアデノウイルスをCOS1細胞に感染させin vivoでのイヌ第VIII因子蛋白の発現実験を行った。4日目の上清で測定したイヌ第VIII因子活性(FVIII:C)は200%、イヌ第VIII因子抗原(FVIII:Ag)は18%であり、活性と抗原値に解離はあったがまずまずの発現が認められた。Accumulation studyでは4日目の上清で測定したイヌ第VIII因子活性(FVIII:C)は300%とさらに高い活性値が得られる事ができた。今後このベクターを用いマウスやイヌを用いたin vitroの実験を行う予定である。
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