顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)はヒト末梢血幹細胞移植における急性GVHD抑制等の免疫調節作用を示す。その機構について、G-CSFの単球のサイトカイン分泌に対する作用に着目して検討した。 健常人ボランテイア末梢血(単球分画約5%前後)から、比重遠心法による赤血球・多核白血球除去およびマイクロビーズによるリンパ球・好塩基球除去の併用で、単球を90%以上の純度で分離精製した。この単球をリポポリサッカライド(LPS)存在下、非存在下で24時間培養し、上清中へのサイトカイン分泌をELISA法で、また細胞内サイトカイン産生を特異抗体での染色によるフローサイトメトリー解析で検討した結果、TNFα、IL-10、IL-12の産生・分泌の著しい亢進を認めた。これに対し、IL-8は未刺激の状態でも産生・分泌が亢進しており、IL-2およびIL-4の分泌は測定感度以下であった。さらに、単球のLPS刺激によるサイトカイン分泌に対するG-CSFの同時添加の効果についてELISA法で検討した。この結果、G-CSF存在下ではTNFα、IL-10、IL-12の分泌が有意に減少したが、IL-8の分泌には明らかな変化を認めなかった。 今回の実験では純化した単球を用いており、G-CSF添加によるサイトカイン分泌抑制は、G-CSFの単球に対する直接作用と考えられる。ヒト正常単球にG-CSF受容体が発現しているという最近の報告はこれを裏付けるものである。TNFαおよびIL-12は、Tリンパ球等に作用して炎症性サイトカインの産生を亢進させるサイトカインであり、GVHD発症時にはその血中濃度が高値を示すと報告されている。したがって、今回の解析から、G-CSFは単球のサイトカイン分泌を直接抑制することによってその免疫調節因子としての作用を発揮する可能性が推測される。この点について、現在さらに検討中である。
|