ゴーシェ病はglucocerebrosidaseの遺伝的欠損により発症する先天代謝異常症である。臨床的には肝脾腫、貧血を主症状とし、検査学的には血小板減少、酸性フォスファターゼ値、アンギオテンシン変換酵素値上昇を特徴とする。治療法として酵素補充療法、骨髄移植が臨床的に行われておりまた遺伝子治療が実験的に試みられている。今年度、我々は遺伝子治療の基礎データとして病状の改善をもたらす至摘酵素投与量を決定するため日本人重症型ゴーシェ病13例につき3通りの投与方法を施行しその臨床的効果を比較検討した。すなわち、60単位/kg/回投与を3年間継続した群、60単位/kg/回投与を6ケ月投与しその後30単位/kg/回投与を維持量として投与した群、60単位/kg/回投与を6ケ月以内に減量した群の3群の臨床効果をヘモグロビン、血小板、酸性フォスファターゼ値、アンギオテンシン変換酵素を指標にして検討した。その結果、重症型においては60単位/kg/回投与を少なくとも3年間継続しなければ貧血の十分な改善、血小板増加は得られず、また投与量依存性に酸性フォスファターゼ値、アンギオテンシン変換酵素値の改善が認められた。以上の結果から重症型ゴーシェ病においては高単位しかも長期の酵素投与が必要であることが明らかとなった。
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