研究概要 |
1:小児の特発性ネフローゼ症候群(INS)で異常を示すT cellサブセットの同定。 INSの初発例で未治療の患児と正常児の末梢血T cellサブセットをフローサイトメトリー法で解析比較した。従来の報告ではINS患児の各T cellサブセットの変化をリンパ球全体に占める割合によって記述していたが、今回の検討によって(1)ネフローゼの病期により末梢血リンパ球数全体が変動するため、各サブセットの変化はその絶対数で比較しなければならないこと、(2)INS患児のT cell数はCD3CD4・CD8・CD4^+CD62L^-・CD4^+CD62L^+・CD8^+CD11b^+・CD8^+CD11b^-・CD4^+CD45RA^-・CD4^+CD45RA^+・CD3^+CD25^+の各分画で異常がみられることをそれぞれ明らかにした(第35回日本小児腎臓病学会学術集会(平成12年6月)で報告・Pediatric Nephrologyに投稿中)。 2:INSでのヘルパーT cell分画の変化の検討。 ヘルパーT1(Th1)・ヘルパーT2(Th2)のバランスがネフローゼ症候群におよぼす影響を,細胞内サイトカインの測定により検討した。その結果、頻回再発型INSでは寛解直後から末梢血中Th2細胞が再発しなかった群と比べ、有意に増加することを明らかにした。従ってTh1/Th2分画をモニターすることで、患児が頻回再発型かどうかを早期から予測できる可能性が示され、適切な治療を事前に行うための有用な指標となりうると考えられた(第12回国際小児腎臓病学会(平成13年9月)で発表予定)。 3:ネフローゼ症候群におけるT cell receptor(TCR) repertoireの解析。 現在、INS患児を対象として(1)ファミリーPCR法によるTCRβ鎖遺伝子の使用頻度の検定、(2)TCRのV、J、C遺伝子プローブを用いたサザンブロットによる遺伝子型検出をそれぞれ行っている。これにより患者の病型や病期でリンパ球のクローナリティーが異なることが示される予定であり、その成果は平成13年度下半期に発表できるものと考えている。
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