1:小児の特発性ネフローゼ症候群(INS)で異常を示すT cellサブセットの同定。 今年度は前年度に引き続き、INSの初発例で未治療の患児と正常児を対象に末梢血T cellサブセットをフローサイトメトリー法で解析し、(1)INS患児はCD4^<+>CD62L^-・CD8^<+>CD11b^+をはじめとするT cell分画の多くに異常があり(2)INS初発例が頻回再発群かどうかの判断には寛解後4週のCD4^<+>CD62L^-/CD8^<+>CD11b^+比が有用で、CD4^<+>CD62L^-クローンが頻回再発患者で重要な役割を果たしている可能性を示した。 2:INSでのヘルパーT cell分画の変化の検討。 末梢血ヘルパーT1(Th1)・T2(Th2)のバランスがネフローゼ症候群におよぼす影響を、前年度に引き続き細胞内サイトカインの測定により検討した。その結果、頻回再発型INSではTh2細胞が寛解直後から増加するのに対し、再発のなかった群ではそうした変化がみられないことを確認した。従ってこの方法も、患児が頻回再発型かどうか早期から予測して適切な治療を行うための有用な指標となりうると考えられた。 3:ネフローゼ症候群におけるT cell receptor(TCR) repertoireの解析。 INS患児を対象としてファミリーPCR法によるTCRβ鎖遺伝子の使用頻度の検定を行った。その結果3/18例でTCRβ鎖遺伝子の使用頻度が異なっていることが確認され、患児における特定のクローンの関与が示唆された。遺伝子の使用頻度が異なる3例についてはTCRのV、J、C遺伝子プローブを用いたサザンブロットによる遺伝子型検出を行ったが、変異を認めなかった。またINS患児全員に遺伝子の使用頻度の相違が認められたわけではなく、この点は今後一層の検討が必要と思われる。 (以上は第37回日本小児腎臓病学会学術集会(平成14年7月)で発表予定)
|