研究概要 |
T,B細胞の欠損、NK活性の低下と、マクロファージ、補体活性が低下しているNOD/SCIDマウスを用いて、ヒト臍帯血から、CD34陽性細胞分画を取り出し移植を行い、ヒト造血を免疫不全(NOD/SCID)マウスに再現し得るか否かを検討した。そして、安定してヒト造血細胞をマウス骨髄に再構築するin vivoアッセイ系を確立することに成功し、骨髄再構築能を持つヒト造血幹細胞の測定を可能とした。現在では5万個のヒト臍帯血CD34陽性細胞を移植後、3ヵ月以上たってもマウス骨髄中の60%,末梢血の30%以上の細胞をヒト型に置き換えられ、T細胞を除く全ての血球系の骨髄再構築を確認している。 次に上記のアッセイ系とサイトカインを用いて、NOD/SCIDマウスの骨髄を再構築させ得るヒト造血幹細胞(SRC:scid repopulating cell)の体外増幅法を検討した。stem cell factor(SCF),Flk2/Flt3 ligand(FL),thrombopoietin(TPO),そして、IL-6/sIL-6R複合体(IL-6/sIL-6R)を種々の組み合わせの存在下で臍帯血CD34陽性細胞を1週間培養し、増幅させた細胞をNOD/SCIDマウスに移植し検討した。結果は、最も有効なサイトカインの組み合わせはSCF+FL+TPO+IL-6/sIL-6Rであることがわかった。この組み合わせで培養した細胞を移植したマウスでは、ヒト造血細胞の平均生着率は培養前の細胞を移植したものに比べて約10倍も高い生着率が得られ、SRCは4.2倍と著明に増幅されていることが証明された。特にSRCの増幅には、IL6/sIL-6Rの細胞内シグナル伝達を担うgp130の刺激が最も重要であることが判明した。
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