研究概要 |
はじめに、IgA腎症を含む慢性腎炎患者およびネフローゼ症候群患者において、実際にアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患を有しているかについて調査した。当院小児科で昭和58年3月から平成12年2月までに腎疾患を発症し平成12年度も引き続き診療中の発症年齢5歳から14歳の慢性腎炎患者17名、ネフローゼ症候群患者5名、計22名を対象とした。腎疾患発症時にアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎を合併していた者は11名と50%を占めた。また、この他にITP、JRAを合併していた患者が各々1名ずつおり、これも含めると13名と59%を占めでいた。日本の33,725名の7歳から15歳の学童でにおいてアトピー性皮膚炎の頻度は5.5%〜7.5%(J Allergy Clin Immunol 1999 Jun;103(6):1148-52),また米国でのアレルギー性鼻炎の頻度は4%から40%とされており(Allergy Asthma Proc 2000 Jan-Feb;21(1):1-6)、腎疾患患者はアレルギー疾患や自己免疫疾患を多く合併していることが示唆された。 次に、PMAまたはionomycinにて活性化されCD4陽性T細胞内に発現されたサイトカインを抗IFN-γおよびIL-4抗体で細胞内染色してフローサイトメトリーによりTh1/Th2バランスの差違について検討を行った。5名の腎疾患患者において検討したところ抗IFN-g陽性細胞/IL-4抗体陽性細胞は平均6.1であった。これは、対照健常小児5名における平均9.2よりもIL-4を発現する細胞の割合が多いと思われた。症例数は少ないながらも腎疾患患者におけるT細胞集団はサイトカインパターンでIL-4を代表とするTh2クローン優位と予想され、アレルギー疾患を合併する根拠であることが示唆された。
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