研究概要 |
IgA腎症を含む慢性腎炎患者およびネフローゼ症候群患者において、実際にアレルギー疾患を有しているかについて調査した。対象は、当院小児科で腎疾患を発症し平成13年度も引き続き診療中の発症年齢5歳から14歳の慢性腎炎患者18名、ネフローゼ症候群患者6名、計24名である。腎疾患発症時にアレルギー疾患を合併していた者は12名と50%を自己免疫疾患も含めると14名と58.3%を占めていた。日本の学童においてアトピー性皮膚炎の頻度は5.5%〜7.5%(J Allergy Clin Immunol 1999 ;103(6):1148-52),また米国でのアレルギー性鼻炎の頻度は4%から40%とされており(Allergy Asthma Proc 2000;21(1):1-6)、腎疾患患者はアレルギー疾患や自己免疫疾患を多く合併していることが示唆された。 次に、PMAとionomycinにて活性化されCD4陽性T細胞内に発現されたサイトカインを抗IFN-γおよびIL-4抗体で細胞内染色してフローサイトメトリーによりTh1/Th2バランスの差違について検討を行った。14名の腎疾患患者において検討した。抗IFN-g陽性細胞/IL-4抗体陽性細胞は平均5.8であった。これは、対照健常小児5名における平均8.9よりもIL-4を発現する細胞の割合が多いと思われた。腎疾患患者におけるT細胞集団はサイトカインパターンでIL-4を代表とするTh2優位と予想され、アレルギー疾患を合併する根拠であることが示唆された。 さらに、サイトメガロウイルスに特異的なCD4細胞について検討した。まず、CD4陽性細胞のうちウイルス抗原特異的に反応する頻度をフローサイトメトリーにて検討した。ELISA法で血清サイトメガロウィルス抗体(IgG)陽性の既感染者は8名であった。サイトメガロウイルス抗原特異的に抗IFN-gを産生した細胞頻度は全CD4細胞数の1.30%で過去に報告された既感染者の頻度1.21%(J Infect Dis2000Mar;181(3):859-66)と大差はなかった。さらに、腎炎及びネフローゼ症候群の症状悪化時にこれらの細胞頻度の変化がないか経時的に調べたところ平均1.8%まで上昇したが、症例数が少ないこともあり統計学的に有意差があるとはいえなかった。
|