私は、炎症性皮膚疾患において表皮に誘導されるケラチンと、その誘導の分子生物学的メカニズムを研究している。今回、表皮細胞に対する機械的刺激が、ケラチン発現にどのように影響を与えるかを検討することが目標であるが、機械的刺激により、表皮細胞よりIL-1などのproinflammatory cytokineが放出されるため、これらのサイトカインがケラチン発現に及ぼす影響について検討を加えた。IL-1αおよびTNFαは、表皮角化細胞において炎症性ケラチンであるケラチンK6の発現を誘導することがわかった。また、ケラチンK6プロモーター領域の検討により、その誘導は、C/EBPサイトに、C/EBPβ、NFκBが関係して生じることが明らかとなった。これらの結果は、Journal of Investigtive Dermatology、Journal of Biological Chemistryに発表した。これまでの実験から、進展刺激によりHaCaT細胞においてケラチンK6が誘導され、ケラチンK10が抑制されるという結果が得られており、今後この誘導経路につき、IL-1、TNFαによる誘導と比較しながら検討を加える予定である。一方、表皮細胞に進展刺激を加えることにより、インテグリンβ1を介してERKが活性化されることはすでに報告されているが、そのシグナル伝達経路については不明である。これまでのプレリミナリーな実験により、この経路は、EGFのシグナル伝達経路と共通する部分があることが判明している。現在さらに詳細に検討中である。
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