自己免疫疾患患者におけるB細胞のシグナル伝達異常を検討するために、まず、全身性強皮症患者のB細胞細胞表面シグナル蛋白の発現量を解析した。全身性強皮症患者の末梢血からB細胞を多重染色し、フローサイトメトリーにて検討したところ、CD19およびCD21の発現レベルが増強しており、一方CD22、FCγIIB(CD32)、CD40、CD80(B7-1)、CD86(B7-2)、CD95(Fas)の発現レベルには有為差は認めれなかった。一方強皮症患者T細胞のCD40L(CD154)の発現は軽度の増加が認められ、血中の可溶性CD40Lも高値を示すことがわかった。以上の結果より、全身性強皮症患者のB細胞では、CD19の制御するシグナル経路ならびにCD40の制御するシグナル経路に異常が存在する可能性があり、この経路について現在さらに詳しい検討を加えている。さらにCD19の制御するシグナル経路について野生型マウスおよびXidマウス脾臓由来のB細胞を用いて解析したところ、PI-3キナーゼおよびBtkの活性化に障害がある場合、CD19からの刺激による細胞内カルシウム動員が全くおこらないことが明らかになった。強皮症のモデル動物であるタイトスキンマウスを現在交配し繁殖をすすめているが、タイトスキンマウスでは、末梢血B細胞表面の抗原受容体の発現レベルに異常がみられることが明らかになった。今後繁殖がすすみ次第、シグナル伝達経路を検討する予定である。
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